仮想化通信

日本仮想化技術株式会社の公式エンジニアブログ

久しぶりにXenServerを使ってみた

相次ぐ値上げラッシュ

ニュースを見れば、頻繁に何かが値上げする話題が取り上げられています。 原材料の高騰がきっかけとして色々なものが値上げ値上げのオンパレードです。 その上円の価値も落ちているため、ドル換算だと値上げをしていないようなものも、今買うと割高な印象を受けます。 例えばスマホとかタブレットとか..

(あえてこう言いますが)VMwareの値上げラッシュも大変ですよね。つい最近もこんなニュースが飛びこんできましたし。

VMwareのライセンス価格の高騰をきっかけとした代替ソフトウェア選定の動きも活発になってきているようです。

OpenStack

例えばOpenStack。VMware vSphereの代替として使うとなると使い方の違いに慣れる必要はありますが、コンポーネントの組み合わせで自由な構成でクラウド環境を構築できるので、便利になる面もあるかと思います。

昔と比べると導入もだいぶラクになりました。弊社ではAnsibleベースでOpenStackの導入や、CanonicalのJujuとMAASを用いたCharmd OpenStackなどを使ってOpenStack導入の経験があります。

また、普段使いのためのOpenStack構築にはMicroStackを使ってOpenStack環境を構築して常用しています。MicroStackはCharmd OpenStackのようなフル機能を実装したOpenStackというわけではありませんが、仮想マシンを作ってその中でアプリケーションを実行して外部からアクセスできるようにするという、一般的な使用方法では問題ないレベルで使えます。その中で使えるOSはLinux KVMで動くOSであれば大抵動作しますし、OpenStack用のイメージ は各ディストリビューションが配布されていることが多く、インスタンスを作成するだけでOSのインストールなどせずに、すぐにアプリケーション実行環境を構築できるので便利かつ効率的です。

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ちなみに最新のMicrostackはMicrok8sの上でCanonical MicroStackが動作する構成になります。コンテナプラットフォームの事実上標準であるKubernetesの上でOpenStackが動作する構成です。OpenStackの各コントローラー系のコンポーネントがKubernetes Podで動き、Kubernetesによってスケジューリングされます。サービスが落ちたらオートヒーリングされるようなイメージです。コンピュートサービスは物理レイヤーで動きます。 旧来のMicrostackとは大きく異なりますが、実装される機能はほとんど共通です。一般的な使用方法では問題ないレベルで使えます。

MicroStackはほぼ全自動で構築できるので、アプリケーション開発時のテスト実行環境として便利かもしれません。例えばTerraformにはOpenStack関連のモジュールが多数用意 されているので、テスト環境をTerraformでOpenStackインスタンス上に用意して、アプリケーションは例えばAnsible Playbookで展開、アプリケーションのテストが終わったらTerraformで環境をサクッと削除といったことが可能です。開発したCanonicalも以前、「MicroStackはCI/CDのパーツとして使っても便利!」みたいなことを言っていました。

今回の本題「XenServer」とライセンスの話

さていよいよ本題に入るのですが、今回はXenServerを久しぶりに触ってみることにしました。XenServerを触るのは10年前くらいにXenAppやXenDesktopのお仕事をいただいた時以来です。

当時のXenDesktopはVMware vSphere、Hyper-V、XenServerで動作するデスクトップ仮想化プラットフォームでした。多くのお客様はすでに導入しているVMware vSphereベースで環境を展開される方が多かった記憶がありますが、当時のXenDesktopにはXenServerのライセンスも付与されていた記憶があり、一から環境を構築するなら仮想化ソフトウェアのコストを削減できるため、XenServerを選択肢とする方法もありました。

かつてのXenServerはXenのエンタープライズ機能を有したCitrixの製品という位置付けであり、私もそんなイメージを持っていました。 最新のXenServer 8はライセンスが大きく変わり、Premium EditionとStandard Edition、Trial Editionのライセンスで提供されています。 このうちTrial Editionは最上位のPremium Editionに含まれるほぼ全ての機能が利用できるエディションであり、XenServer 8のインストール直後に割り当てられます。Trial Editionの唯一の制限は管理できるホストが3つまでであるということです。以前のバージョンのFree Editionよりも多くの機能を使えます。「Trial」とついていますが、XX日試用版というわけではないようです。

今回はTrial EditionライセンスのXenServer 8を軽く触ってみた時の記録です。無料のVMware ESXiとの使い勝手の差を中心にまとめてみます。 エンタープライズ用途の機能は複数のマシンが必要になってくるので、今後機会があったらまたブログに書こうと思います。

ダウンロードとインストール

以前はCirtixのサイトからXenServerやXenCenterをダウンロードしていたかと思いますが、XenServer 8とその他のツールはXenServerのサイトからダウンロードできます。リストにあるXenServerやXenCenterをダウンロードしてください。

あとはダウンロードしたXenServer 8のイメージをUSBメモリーやCD-Rメディアなどに書き込んで、画面の指示に従ってインストールしていくだけで使えます。

XenServerの管理はXenCenterで行います。XenCenterはWindows向けアプリケーションです。インストールしてあとはXenServerと接続するとXenServerの管理をXenCenterでできるようになります。

仮想マシンのインストールには一番簡単なのは仮想化ホストのDVDドライブなどを使ったインストールメディア挿入にて仮想マシンへのOSインストールを実行する方法です。ただ、最近のサーバーではDVDドライブを実装していないものも多いと思いますので、NFSやiSCSIストレージマウントしてそのストレージ上のISOイメージを使う方法もあるそうです。

久しぶりにISOイメージをDVD-RWに書き込みました。最近のLinux OSは単純なネットインストーラーでも1GBを超えるので、CD-Rだと容量が全然足らないですね。DVD-RWメディアを探すのに苦労しました。たくさんCD-R(やCD-RW)メディアがあるんだけどどうしよう。

準備ができたらあとはインストールするだけです。いくつかのOSはサポートされているので準仮想化で動作させることができます。対応していなくても完全仮想化で動作可能です(準仮想化の方が高速に動作)。元々はCirtixのデスクトップ仮想化、アプリケーションの仮想化ソリューションを支えるプラットフォームとして提供されていた製品なので、よく使われるOSについてはサポートされているようです。古すぎるOSについてはサポートされていないため、完全仮想化として動かすことになると思います。

問題なく仮想マシンブートに成功しました。あとは普通にインストールしていくだけです。

パッチについて

XenServer 8からはライセンスや提供形式が変わり、無料のライセンスではパッチが提供されなくなったようです。 今後XenServer 8.5とか9、10といったリリースがあれば新しいものが提供されるとは思いますが、中間のリリースパッチについては有料ライセンスのみで提供という理解であっていると思います。 パッチによる機能改修、脆弱性修正などを迅速に行いたい場合は有料のライセンスが必要になりそうです。 ライセンスの価格についてはパートナーに相談してみてください。

ESXiとXenServerの違い

ESXi 5.5以降のESXiは、Webクライアントが標準で利用できるようになっていました。これはサポートするブラウザーを使えばクライアントでどのOSを使っていようが仮想マシンの管理ができるということです。

XenServerはWebインターフェイスは実装されていませんので、XenCenterのようなソフトウェアをクライアントマシンにインストールする必要があります。XenCenter自体はWindows向けのインストーラーしか提供されておらず一部の管理はコマンドでもできるものの、実質Windowsクライアントが必要ということになります。

ESXiはホストのローカルデータストアにISOイメージを置いてそれを仮想マシンのインストールに使うという方法も取れますが、XenServerのストレージはそのような使い方ができず、一番簡単なのはホストのメディアドライブを使って物理インストールメディアでブートするという方法です。NFSやiSCSIを使ったISOブートは可能ですが、一から作るとしたらちょっと手間であるといったところが、違いとして挙げられるかもしれません。裏を返せば、そのような環境が揃っていれば、あまりESXiとの違いを感じることなく利用できるのではと思います。

ちなみにXenCenterはWindows 11 Homeでも問題なく動作しました。お家でも使えそうです。

とはいえXenServerにもメリットがあります。ベースはオープンソースのXenであり、もっと言ってしまえばLinuxがベースで動くプラットフォームです。ESXiもある意味一緒ではあるのですが、大きく異なるのがハードウェアサポートの充実です。

ESXiではNICとかRAIDコントローラーとかで苦労することがあり、インストールする場合はサーバーベンダーが提供するカスタムインストーラーを使うのがお決まりでしたが、LinuxベースのXenServerはLinuxがサポートするハードウェアであれば大抵問題なく動作します。例えばそれがサーバーではなくても、デスクトップPCや自作PCなどでも動かそうと思えば動かせます。

ただ、正式サポートされている構成が知りたければ、ここから確認できます。

無料のESXiの代替としてXenServerは割といいかもしれません。 有料のVMware vSphereの代替としてどうかについては今後の検証次第でしょうか。以前のバージョンと同等であればXenMotionやStorage XenMotionを使った仮想マシンの移行も問題なくできていましたし、ホストのクラスタリングもスムーズにできていたので印象としては良かったです。

他の代替ソフトウェアについても今後、チェックしていきたいと思います。